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ワヤン・クリット

バリの伝統芸能に「ワヤン・クリット」と呼ばれる影絵芝居があります。
ワヤンは「影」、クリットは「皮」の意味。
人形が水牛の皮で作られていることからこう言います。

ワヤン・クリットにはいくつかの種類がありますが、観光地で見られるものは白いスクリーンを張り、後ろから石油ランプで照らして行われます。
最近は電気照明を使った影絵もあります。
けれどゆらめくランプの火に照らされた影絵は神秘的。
影絵の世界にひたるには、伝統的な石油ランプの芝居がいいでしょう。

人形は細かく穴がうがたれており、観客はただ黒いだけの影でなくその輪郭も見ることができます。
穴で表現した模様はとても繊細で芸術性も高く、あまり動かしたら壊れてしまうのではないかと思うほどです。

ワヤン・クリットは単なる娯楽ではなく、本来は宗教儀礼や道徳教育の意味合いも持っていました。
インド古典文学「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」を題材に、哲学や思想を盛り込みながら語る雄大な叙事詩は、観客の笑いと涙をそそります。

その影絵に乗せて聞こえるのが人形遣い「ダラン」の歌と語り。
ダランは一度に数十体の人形を操りながらときに歌い、語り、そして楽器演奏者に指示も出します。
ワヤン・クリットの性質上、ダランは深い教養を持った人物でなければならず、バリの人々から尊敬を集めています。
ワヤン・クリットを鑑賞したら、スクリーン裏も覗いてみましょう。
ダランの華麗な人形さばきには思わずため息が出ます。

その時に気づくのが、影しか見えなかった人形が実は色鮮やかに塗られていることです。
なぜスクリーンで隠してしまうのでしょう?
これには宗教的な理由があります。
スクリーンの表側はこの世、裏側はあの世。
あの世の美しい鮮やかな世界は、この世からは白黒にしか見えないことを表現しているのです。

バリの夜が更けたらワヤン・クリットを見に行きましょう。
揺らぐ火に浮かび上がる幻想的な影絵は、あなたを別の世界に連れて行きます。

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